こんにちは、shulinkです。
こちらの記事で書きましたが、
映画『花とアリス』は一番好きな邦画です。
左が2004年3月公開の劇場版で、
右が2003年Web公開されたショートフィルムや
メイキングが入ってます。
このショートフィルムを元に劇場版が制作されました。
どちらも岩井俊二監督作品です。
先日、数年ぶりに観返してみました。
春の季節に、ぴったりな映画だと思います。
もう初夏になってしまいましたが、、、
●あらすじ
中学3年の冬、高校受験直前、
親友である花こと荒井花(鈴木杏)と、
アリスこと有栖川徹子(ありすがわてつこ、蒼井優)
が朝の通学時に見かけて、花が一目惚れした、
宮本雅志(郭智博)と同じ高校に入学した。
そして、花の憧れの宮本先輩を巡る三角関係を描く。
●どんな三角関係?
花は、宮本先輩が所属していた落語研究会に入部。
以前にも、アリスに内緒で宮本先輩をストーキング
していた。ある時、宮本先輩がとある事故で頭を
打って意識が朦朧としている隙に、それを見かけた
花は、先輩が記憶喪失だということを吹き込んで、
さらに、自分と先輩が付き合っているという嘘を
ついてしまう。その嘘の上塗りのために、アリスに
協力させ、アリスは先輩の元カノという設定にした。
それから、宮本先輩は2人とそれぞれデートする
ことになった。
●花と宮本先輩のデート
宮本先輩は、花と付き合っていたということを
常に疑っているので、乗り気じゃない。
あるデートの、映画館で観ていた映画は
『太陽の王子ホルスの大冒険』でした。
ちなみに、高畑勲の初監督作品です。
これ、ずーと観ようと思って、まだ観れてない。
●アリスと宮本先輩のデート
アリスは元カノを演じるためにデートしているが、
宮本先輩は少しずつアリスに惹かれていく。
●アリスと別居している父のデート
最初に、この映画を観た時、
アリスの父(平泉成)と分からなくて、
不思議な関係だなと思っていたんだけど、
アリスはずーと父のことを呼びかけないし。
両親は離婚していて、アリスは母親と暮らして
いるが、たまに父親にも会っている。
このシーンが一番好きです。
このデート中、鶴岡八幡宮の中の橋の上で
(こちらの記事を参照)
中国人の携帯電話を拾って、父が中国語を話せる
ことが分かる。父は色々話題を振るが、アリスは
ずーとぶっきらぼうに応えるのみ。
漢文の話から、父は「I love you」を中国語で
「我愛你(うぉーあいにー)」と教える。
父は、とぼけた役回りで、アリスとは微妙にズレて
いるが、これが後で効いてくる。
電車での別れ際、父はネクタイを締めながら、
もう既に仕事の顔になっている。アリスは泣き出し
そうな、寂しそうな顔をしながら、その感情を抑え
ている感じがいい。本当に泣いていたら、あまり
感動しないと思う。電車に残ったアリスは、ドアが
閉まる直前に、「パパ」と初めて呼びかけて、
「我愛你」と言うが、それを父は、そういう時は
「再見(ツァイチェン)」と言うんだと、そっけなく
返して、ドアが閉まる。
●演技とは?
演技の上手下手というのは、よく分からなかったけど、
素人が演技している感じがあって、例えば、アリスが
宮本先輩との初対面時に「帰ってよ」と追い返すシーン
は分かり易かった。
アリスは、原宿で買い物中、芸能事務所にスカウト
されるが、オーディションでは、うまく自己アピール
できなくて、なかなか仕事が決まらない。
メイキングを観ると、監督から、アリスは宮本先輩と
会っている時は、女優の練習をしているみたいなもの
と演技指導されていました。
また、平泉成が、監督のことを評価していて、
俳優が芝居しやすいように撮ってくれるとのこと。
具体的には、カット割りが少なくワンカットが長い。
これに対し、監督は、ドラマの現場とかで、セリフ
一言ずつのカットで撮ってくれと要求されたことが
あったけど、それでは何をやっているのか分からなく
なってしまうよと応えていました。
●記憶を手繰り寄せる物語でもある
記憶喪失というのが物語の主軸なんだけど、
アリスが父との思い出を思い出していく過程
も描かれています。
アリスが両親と海辺でトランプしたことを
父に確かめるが、父は覚えていない。
花とアリス、宮本先輩の3人で海に行き、
ハートのエースを探すゲームをした時、
宮本先輩が実は、アリスが子供の頃、失くした
トランプを見つけていた。それを、アリスとの
最後のデートの時に見せたら、アリスは突然
泣き出してしまう。それは、両親との懐かしい
思い出とつながって、感極まったから。
●花の、本当の告白(自分の罪を告白)
文化祭で、落語研究会として高座に上がること
になった花は、その舞台袖にて、宮本先輩に
今まで嘘をついていたことを告白し、先輩は
それを受け入れ、めでたく三角関係は解消した
のでした。
●アリスのバレエシーン
花とアリスは、同じバレエ教室に通っていて、
その練習風景もたくさん出てきます。
アリスは、芸能の仕事を取るために、様々な
オーディションを受けては、どれも落ちてばかり
だったけど、雑誌モデルを選ぶオーディションで
「バレエできるの?踊ってみて」と聞かれ披露した。
バレエの衣装って、ワイヤとかで固く保っていて、
動きがないから、おもしろくないと思っていたけど、
ここでは、高校の制服でスカートをひらひらさせ
ながら踊ってます。
(注意:おパンツは見えないですよ)
長い髪をなびかせながら、躍動感に溢れています。
トゥーシューズがないと、バレエは踊れませんが、
それも、紙コップとガムテープで即席で作って
しまう機転の利かせ方がいいですね。
プロのバレリーナじゃない高校生が、一生懸命に
なっているシーンに、一瞬のきらめきがあります。
オーディションの面接をしている、カメラマンの、
「いいもの見たなぁ」という後味感が出てます。
それに比べ、雑誌編集者(広末涼子)の大人な
冷めた対応ぶりが対照的です。
本編では、ずーと音楽がかかってますが、
メイキングでは、床を踏み込む時の音とかが聴けて、
臨場感があります。
音楽がまた良くて、お気に入りです。
この映画の、ファンタジー性や切なさ感を
引き立たせてくれます。
全部、監督が作っています。
あと、映画公開時に特集された雑誌「SWITCH」
主演2人と監督のインタビューが興味深いです。
この映画、2004年公開時に劇場で観たんですが、
エンドロールを観ながら、しばらく席を立ちたくない、
このまま、この映画に浸っていたいと思った作品でした。
レイトショーだったので、終わったら、深夜で、
映画のことを思い出しながら、帰り道をトボトボと
歩いていました。
これからも、そんな映画に出会えたらいいなと思いますが、
当分ないだろうなぁ・・・
再見(では、また~)!